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カメが長い間水に潜っていられるのは甲羅のおかげ!?~甲羅はアルカリの貯蔵庫~

「カメの特徴は?」と聞かれたら何を思い浮かべますか。多くの方は「甲羅」なのではないでしょうか。カメの甲羅には、外敵の攻撃から身を守るという重要な役割がありますが、ある種のカメは体内で発生する酸の中和に甲羅を利用します。今回はカメの甲羅の「アルカリの貯蔵庫」としての役割を紹介します。

ニシキガメは3ヵ月以上潜水し続ける

ニシキガメ(学名:Chrysemys picta)はアメリカ合衆国の北部とカナダの南部に生息する淡水生のカメで、冬場は氷に覆われた池の中で数ヵ月間、冬眠して過ごします。なんと、飼育下では酸素の無い3℃の水の中で3ヵ月以上過ごした例も記録されています。

甲羅の役割

ニシキガメはなぜ数ヵ月にもわたって酸素の無い水中で過ごせるのでしょうか。その秘密は甲羅にあります。ニシキガメの甲羅は体重の約30%を占め、その大部分はカルシウム塩やマグネシウム塩、ナトリウム塩といったアルカリ性の物質で構成されています。甲羅は外敵の攻撃から身を守る鎧としての役割や筋肉を固定する役割を果たしていますが、アルカリの貯蔵庫でもあるのです。

冬眠中は酸性物質が蓄積する

ニシキガメは通常、肺で取り込んだ酸素を用いてエネルギーを作り出し(好気性代謝)、その過程で発生した不要な物質は呼吸や尿で体外に排泄しています。
一方で、冬眠中は水中で過ごしますが、魚と違いエラがないため、水から酸素を取り込むことができません。そこで、ニシキガメは酸素を使わない方法で必要なエネルギーを作り出します(嫌気性代謝)が、その過程で酸性物質である乳酸も発生します。冬眠中は呼吸も尿もしないため、酸を体外に排泄できませんが、そのままでは体は酸性に傾き、正常に機能しなくなってしまいます。

冬眠中は甲羅に蓄えたアルカリを利用

冬眠中は不要な酸を体の外に排泄できないため、体内で処理する必要がありますが、ニシキガメは血液中の乳酸濃度が高まると、甲羅から炭酸カルシウムをはじめとするアルカリ性物質を血中に放出したり、逆に血液中の乳酸をアルカリ性物質が豊富な甲羅に取り込んだりすることで、酸を中和します。
ニシキガメは甲羅に蓄えたアルカリを利用し、身体が酸性に傾くのを防ぐことで、長期間の潜水を可能にし、厳しい冬を乗り越えているのです。

実はヒトでも・・・

ヒトにはカメのような甲羅はありませんが、骨に炭酸カルシウム等のアルカリ性物質が多く含まれております。ヒトでも血液が酸性に傾きそうになると、酸を中和するため、骨組織を壊し炭酸カルシウムを血中に動員することが知られております。

参考資料:Donald C. Jackson. News Physiol Sci. 2000 Aug:15:181-185.
Annalisa Noce,et al. Nutrients. 2021 Jul 24;13(8):2534.

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