レモンはすっぱいのにアルカリ性食品!?~食品の酸性とアルカリ性~
酸味の正体
味覚は舌の味蕾という場所に存在する味覚センサー(味覚受容体)が食品中の味物質を感知し、その情報が脳内に伝わることで感じます。味覚には甘味、苦味、旨味、酸味、塩味がありますが、そのうちの酸味のセンサーは水素イオン(H+)を感知します。つまり、H+濃度が高い(pHが低い=酸性物質)と酸味のセンサーがよく働くので、すっぱく感じるというわけです。実際にすっぱいものの代表であるレモン汁にはクエン酸という酸性物質が豊富に含まれており、このpHを測定すると2~3程度と低く、酸性を示します。
酸性食品・アルカリ性食品の秘密
ではなぜ酸性のpHを示すレモンはアルカリ性食品なのでしょうか?
その秘密は食品中の成分が体内で受ける代謝にあります。
レモンに含まれるクエン酸は酸性物質ですが、体内に吸収されると二酸化炭素に代謝され、呼吸によって速やかに排泄されてしまいます。一方で、レモンにはクエン酸カリウムも含まれており、このクエン酸カリウムは体内で重炭酸カリウムという弱アルカリ性物質に代謝され、尿中に排泄されるまで体内に保持されます。つまり、酸性食品なのかアルカリ性食品なのかに、食品のもともとのpHは関係なく、代謝を受けて最終的に体に残った成分が酸性なのかアルカリ性なのかで判断されるのです。
代表的な酸性食品・アルカリ性食品と体への影響
酸性食品としては、肉や魚、卵といった、リンや硫黄の含量が多い動物性タンパク質が挙げられ、アルカリ性食品としては、クエン酸カリウム等の有機酸塩を豊富に含む野菜・果物が挙げられます。米や豆、芋類はリンを多く含むため、中性~酸性よりですが、レモンに限らず、植物性食品の多くはアルカリ性食品です。
ヒトの体にはpHを一定にコントロールするシステムが備わっており、過剰な酸・アルカリは尿中等へ排泄されるため、酸性食品またはアルカリ性食品を大量に摂取しても、血液のpHがどちらかに大きく傾くことはありません。一方で、尿のpHは食事により容易に変動し、一日のうちでも大きく変化しますが、一定の範囲を超えて酸性やアルカリ性に大きく傾くと、尿路結石が形成されやすくなるため、注意が必要です。また、血液のpHに影響がなくても、食事が日常的に酸性に傾いていると、酸を排泄する腎臓に負担がかかります。そのため、食事によって生じる酸は腎機能障害に繋がることが知られており、その他にも高血圧や骨密度の低下等に繋がる可能性も報告されています。
現代の欧米型の食生活は動物性タンパク質が多く、日本人の多くが野菜・果物の摂取不足であると言われています。肉や魚などの酸性食品だけではなく、野菜や果物などのアルカリ性食品もバランスよく摂取することが重要です。
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厚生労働省「健康日本21(第三次)について~栄養・食生活関連を中心に~」(令和5年7月19日)