結石&メタボの背後に酸性おしっこが

日本人に尿路結石が増えてきています。
この病気に詳しい井口正典先生は、一番の原因として
「食生活の欧米化」を挙げています。
そのわけとは・・・
尿路結石の患者数は40年前に比べて約3倍に増加

「尿路結石」は、おしっこの中に溶け込んだ結石の成分が結晶化し、それが尿路(腎臓から尿道までのおしっこの通り道)にできた石状のかたまりのことです。背中やわき腹に激痛がはしることで知られていますが、これは結石が動いておしっこの流れを閉塞するためです。血尿や頻尿、排尿困難をともなうこともあります。
日本尿路結石症学会が2005年に行った調査によると、尿路結石の患者数は40年前(1965年)と比べて約3倍と、急激に増えています(図1)。男性は7人に1人、女性は15人に1人の割合で、一生に一度は尿路結石症にかかるとされています。
食生活の欧米化がおしっこを酸性に
尿路結石が増えた大きな理由は、食生活が欧米化してきたことです。具体的には「高たんぱく」、「高脂肪」のほか、「糖分のとりすぎ」「野菜や海藻類の不足」などが挙げられ、これらの食生活は、いずれもおしっこを酸性に傾けます。
尿路結石は、シュウ酸カルシウム結石がその85%を占めますが、これを含めほとんどの結石は、おしっこが酸性に傾くほどできやすくなります。実際、日本人のおしっこがだんだん酸性に傾いているというデータもあります(図2)。尿路結石は、食生活が大きな原因となって起こる生活習慣病であるといえます。
こうしたことから、尿路結石の予防のためには、おしっこをよりアルカリ側に傾ける食生活が必要になります。なお、結石を溶かしたり、再発を防ぐために、尿アルカリ化剤というお薬が広く用いられています。
ただし、逆にアルカリ側にしすぎることで、別の種類の結石が作られる場合がありますので、おしっこのpHは6.0~7.0に保つことが望ましいといえます。
食生活の欧米化はメタボも引き起こす

おしっこを酸性化する食生活(高脂肪、高たんぱくなど)は、メタボリックシンドローム(メタボ)をも引き起こします。メタボリックシンドロームは、内臓脂肪型肥満に、高血糖、高中性脂肪、高血圧を重複してもつ状態を指し、最近では動脈硬化の原因として重視されています。
また、「夜にたくさん食べてすぐ寝る」「朝食を抜く」といった食生活も、結石をできやすくし、メタボリックシンドロームを招く原因になります。
尿路結石とメタボロックシンドロームを予防するには、食事の内容や食事の時間、回数など、食生活全般を見直すことが必要です。
図 1

図 2


おしっこのpHと結石&メタボの関係
「おしっこを酸性にする食生活」は尿を酸性に傾けるだけでなく、メタボリックシンドロームや尿路結石を引き起こす原因となります。
尿が酸性化すると、尿中で結石予防の働きをするクエン酸が減少し、シュウ酸カルシウム結石ができやすくなります。さらに、尿酸やシスチンという物質が尿中に溶けにくくなり、尿酸結石、シスチン結石も生じやすくなります。
「おしっこを酸性にする食生活」を送っていると、内臓脂肪も増えてしまいます。
