まだまだ、あるある、善玉菌を力づける「応援団」
腸内細菌といえど生き物です。当然エサを必要とします。私たちが食べたものの一部が、そのエサになります。と言うことは、善玉菌に力をつけるのも、逆に悪玉菌の勢力を増すことになるのも、私たちが食べる食べ物次第なのです。
繰り返すようですが、いろいろな病気の原因として、脂肪や動物性たんぱく質の摂取の増加が問題視されていますが、何が何でも脂肪やたんぱく質を病気を引き起こす犯人扱いにしてはいけません。たんぱく質は、筋肉、皮膚、毛、骨、赤血球、心臓など私たちのからだの基本を作るのになくてはならないものです。脂肪はからだを動かすために不可欠なエネルギーの供給源です。肉が食卓に載るのが当たり前になった今、脂肪や動物性たんぱく質の功罪に神経質になるより、むしろ、肉食などによるマイナス面を補う食べ物に目を向けたいものです。
善玉菌は「第六の栄養素」が大の好物です。
すでに説明しましたように、大腸は小腸から送られてきた食べ物の「カス」などを含む、水分たっぷりのドロドロした内容物を材料に便をつくります。いってみれば便の中身の大半は、ヒトの消化酵素で分解できない食べ物の「カス」なのです。その「カス」づくりに欠かせないのが「食物繊維」です。
今では、食物繊維は肥満や糖尿病の予防、コレステロールや血圧降下作用を有する「第六の栄養素」という立派な地位を与えられていますが、50年はど前までは、脂肪やたんぱく質やビタミンやミネラルのようにエネルギー源になるわけでもなく、それかといって、からだの働きを左右する作用を持つものでもないので、栄養学的にはムダなものとして無視されていました。
ところが、その食物繊維がからだに良い何か重要な働きをしているではないか、と考えついた医者がいました。バーネットというイギリスの医者です。おもしろいことに、そのきっかけとなったのは、顕微鏡や試験管を使った研究ではなく、単なる「芋」でした。
なぜ、ヨーロッパ人に比べ、芋をたくさん食べるアフリカの人々には大腸ガンの人が少ないのだろう?との疑問を持ったことから、食物繊維の重要な働きに気がついたのです。
わが国だって、イギリスのバーネット医師の“疑問”に負けていません。昔から、“冬至にカボチャを食べると風邪引かず”、“三日通じがなかったらゴボウ食え”、“コンニャクはからだの砂払い”、“夜の昆布は見逃すな”などの「言い伝え」が残っているように、昔の人は、暮らしの知恵として繊維質の多い食べ物の大切さをとっくに知っていたのではないかと思われます。
江戸時代には、江戸の若い女性の好きなものとして“芝居・こんにゃく・いも・かぼちゃ”という、お芝居以外は食物繊維を含む食べ物ばかりを並べたコトバさえ生まれているほどです。

肉を食べる分だけ、食物繊維もちゃんと摂る。
腸内にいつまでも便や、腐敗した有害物質が残っていると、いいことはありません。食物繊維は善玉菌のビフィズス菌を増やし、有害物質を吸着して、からだの外に排出するなどの働きがあります。
ところが、脂っこい洋風の食べ物特有の糖質、タンパク、脂肪などは消化されると、繊維質のカスがほとんど残らないと言われています。
とは言っても、肉の美味しさには格別のものがありますね。いまさら、食スタイルを菜食主義や和食中心にしようなんて、現実的には無理な話です。それに肉類や魚介類には、食物繊維はほとんど含まれていませんが、これらはからだにとって大切なたんぱく源であることには変わりありません。適当に摂らなくていけない栄養素です。
ごく当たり前のことですが、からだにいい栄養素を欧米型の食卓に登場する食べ物から摂ると同時に、繊維質の多い野菜や果物、穀物類を上手に組み合わせたバランスのとれた食生活を続ければ、いろいろな病気をかなり防げます。
宣伝されているわりには、誤解されがちなオリゴ糖
最近、スーパーマケットなどで、「オリゴ糖入」と書かれた食品が増えてきたと思いませんか。ガムやジュースやキャラメル、それにプリンにクッキーにドレッシングにジャムなど、まさに“あるわあるわ”の大賑わい。ところが、糖と言うからには、“それって、砂糖の一種なのかしら・・・”と勘違いされている方も多いようです。オリゴ糖とは、いったい何なんでしょうか。どうして、もてはやされているのでしょうか。ちょっと専門的な話になりますが、私たちは糖質をでんぷんという形でとります。これが分解されて、ブドウ糖・果糖などの単糖(類)に振り分けられた時に吸収されます。
ところで、砂糖たっぷりのケーキを食べると、満腹感が得られて、もっと食べたいと思ってもそんなに多く食べられませんね。砂糖は2個の単糖が結合してできているので、すぐに分解・吸収され、血糖値が上昇する結果、満腹感が得られるからです。
一方、オリゴ糖は糖類であることには違いありませんが、砂糖と違い、ブドウ糖・果糖などの単糖類が2~6個つながっている糖類です。ですから、からだに吸収されにくく(難吸収性)、そのまま大腸に到達する特性があります。
つまり、オリゴ糖食品の人気は少々食べても血糖値が上昇しないことと、オリゴ糖の難吸収性という特性により、大腸にそのまま到達し、腸内のビフィズス菌など善玉菌の栄養源になるからです。

オリゴ糖入の食品の食べ過ぎは考えものです。
これまでの話からおわかりのように、悪玉菌を減らす手っとり早い方法は、(1)悪玉菌にエサとなるものをやらない (2)善玉菌が好物のエサをやり、腸内環境を平和にする (3)善玉菌の応援団を送り込む、ことです。
当然、善玉菌のエサになるオリゴ糖でビフィズス菌が増えれば、それだけ腸内環境が改善されます。こうした説明を聞いたりすると、まるで腸の「救世主」みたいなイメージを持たれる方がいらっしゃるかもしれません。なかには、何が何でもオリゴ糖だと、オリゴ糖入の食品をセッセセッセと買い求める方がいるかもしれませんが、何事も摂りすぎは禁物です。
オリゴ糖はあまり消化がよくありません。食べ過ぎると、オナカが張ったり、壊したりしますから、普段食べる、たとえばオリゴ糖も食物繊維も豊富に含むごぼうや大豆製品などから摂るようにするのがいちばんです。
それに、オリゴ糖には整腸作用はありません。あくまで腸内細菌叢のバランスを正常にするビフィズス菌など善玉菌の栄養源としてご理解ください。