痛いときのとっさの言葉
「ア」で始まる表現が多いのはなぜ?
誤って包丁で指を切った、テーブルの角にむこうずねを打ち付けた、ハチに刺された・・・、こんなときとっさに出る言葉は「アイタ!」この「ア」は人が驚いたり、嘆いたりしたときに思わず発する音で、間投詞の接頭語としての「ア」。「イタ」は「痛い」から来ていると思われます。
では、外国ではなんというのでしょうか。わが国のペインクリニックの草分けの一人であり、生涯を痛みの診療と研究にささげられた元大阪医科大学麻酔教授の故兵頭正義先生がくわしく調べておられます。
まず、イギリスやアメリカなど英語圏での「アウチ」は有名。お隣の韓国では「アパヨ」、中国では「アトン」、フィリピンは「アライ」、タイは「ジェ」、アラビアは「ラウー」。
ヨーロッパへ渡って、フランスは「アイー」、ドイツは「アウア」、オランダは「ダット」、ポルトガルは「ドイ」、スペインは「ハイ」、イタリアは「マーレ」。
アフリカ大陸のスワヒリ語では「アター」、タンザニアのスクマ族の言葉では「ススス」。「アイタ」と同じく、間投詞の接頭語としての「ア」に、それぞれの国の痛いという意味の言葉がくっ付いた表現が多いようです。ちなみに、中国語「アトン」の「トン」は漢字では「疼」、英語「アウチ(ouch)」も、語源的には「oh」と「ache」がくっ付いたものと理解されます。表現はさまざまなようですが、その成り立ちには近いものがあるといえるでしょうか。
ところで、痛みを「疼痛」(とうつう)といいますが、これを読めない若者がいるそうです。「疼く」(うずく)の訓読みになると、もっとだめ。まさか医学部の学生にはいないと思いたいですが、これはこれで頭の痛い話です。
(出典:兵頭正義「知らなかった痛みの話」 健友館)

